以前紹介した、右半身が少し不自由なTさん。「今度はコレを作りたい」と、ユニットの箱のテキストを持ってきてくださいました。
この作品は、らせん階段のように立体に折ったピースを3つ、交互に組み上げて作ります。この構造、知っていれば簡単なのですが、やったことのない方には難解なので、一緒に同じものを作りながらコツをお伝えしました。
で、翌週。
「包装紙で折ったら綺麗だったよ。組み方を変えるだけで模様が変わるんだね。」
と完全にマスターしてきました。マジかよ。
「先生は両手が使えるから羨ましいね。片手だと、組み立てがうまくいかないよ。」
いや、普通にできとるやん。
個人的には、箱根で買ったという寄木細工の柄がツボ。私も箱根行ったら買おう。
左手と、わずかに動く右手を使い、ゆっくり着実に作業を進めるTさん。一緒にやっていてつくづく思うのは、折り紙はスピード勝負ではないということ。時間をかければかけるほど、良い作品ができます。
技術的なメリットとしては、ゆっくりやると、工程を隅々まで観察できます。
観察というのは、私が一番大切にしている事です。誤差を見つけるのはもちろん、力に対する紙の挙動や、繊維のもろさを読み、さらには紙の厚みを計算した微調整まで可能になります。また、やっている作業が完成品のどの部分になるのか、イメージするのも大切です。
折り紙の目的は言うまでもなく、作品を完成させることですが、最終的に人の目に触れるのは、「いかに早く作ったか」ではなく、手間暇を費やした結果から生まれるクオリティです。
簡単な作品でも自分の技術を過信せず、真摯に向き合いたいものです。
出典:NHK出版「ユニット折り紙でつくる おしゃれな小物たち」/布施知子